四国自然史科学研究センター・コウモリ調査

えこらぼ環境団体・講師紹介レポート第1回目は
認定NPO法人・四国自然史科学研究センターさんのご紹介。
7月17〜18日に開催された天狗高原でのコウモリの生態調査に密着してきました。

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新荘川の目の前にある四国自然史科学研究センターさん。
須崎市立新荘公民館が活動の拠点です。

まずは四国自然史科学研究センターさんのご紹介、
四国自然史科学研究センターさんの主な活動は、野生動物の基礎調査・研究。
その結果を元に、地域生態系の保全や環境の復元を目指す他、四国全体の
自然史科学研究の拠点作りや情報発信、教育機関などとも連携した
後継者の育成までを視野に入れ活動を続けています。
また近年は須崎市の害獣駆除にもたずさわる他、傷ついた野生動物の保護、治療、
野生復帰のアシストも行っています。

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ライフワークとなっている骨格標本作りについて熱く語るセンター長の谷地森秀二さん。
この骨格標本作りは金銭的な利益にはつながらないのですが、いつか、どこかの研究者が
必要とする日がくるであろうことを想定して、地道に続けられています。
未来に役立つ、とても大切な自然史の基礎資料なのです。

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剥製もたくさん制作され、多くは横倉山自然の森博物館に保存されています。
これも未来の貴重な基礎資料。

センターの発足は平成15年、現在のスタッフは4名で、それぞれ
コウモリ、熊、カモシカ、ニホンザルなどの調査研究に邁進されています。
自然科学史の教育にも熱心に取り組まれ須崎の小中学校の他、四万十高校、
各地の公民館など年間50回程度のレクチャーを行っています。

さてさて、本日のコウモリ調査、こちらはセンター長の谷地森さんの調査対象。
今回の調査は、平成27年の4月から月に一回のペースで行われている調査の一環で、
天狗高原に生息するコウモリの種類、活動期間などの把握を目的に行われます。

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本日集結した調査隊のメンバー。この日は、9月10日〜11日に天狗高原で開催される
「コウモリフェスティバル2016 in 天狗高原」のプレイベントの展示準備も兼ねて
カルスト学習館にベースキャンプを設営ました。
学生さんから在野の調査員まで、信頼のおけるメンバーです。

谷地森
「高知に来るまでは(谷地森さんは宮城県ご出身)、タヌキの調査をメインに研究を
行っていました。縁があって高知に来たところ、コウモリの確認された種が少ないことが
わかり、それではと思い調査を続けています。私が来る2002年までは高知では8種
しか見つかっていなかったのですが、腰を据えて調査を行ったところ現在では
15種まで確認が進んでいます。天狗高原でもこれまで11種が確認できています」。

午後4時、プレイベントの展示準備も一段落したところで、
早速コウモリ捕獲調査のスタートです。

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舞台はここ四国カルスト・天狗高原。下界が暑っつい暑っつい言っている中、
ひんやり避暑地のような涼しさです。

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谷地森さんを先頭に、天狗高原・天狗荘のキャンプサイトに足を進める面々。

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この奥に4箇所、捕獲用のトラップを仕掛けます。

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コウモリトラップ組立中。このあみあみに引っかかって

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この袋にポトリと落ちて捕獲されます。コウモリだと這い上がれない仕組みになってます。
単純な装置ですが、1体38万円のお値打ち品です。

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こんな感じでコウモリの飛びそうなところを塞いで設置。中央には万一人が通りかかった
時のために「コウモリ調査中」の看板を設置して完了です。

谷地森
「季節天候にもよりますが、多い時で70頭捕獲できたことがあります。特に子どもが
飛び始める9月にはたくさん捕れる傾向がありますね。ここでの観測では11月までは
捕獲できて12月は0でした。経験値から12月〜3月あたりまでは冬眠している
可能性が高いのではと考えています。6〜7月は雨が多くまちまちですが、
今日は天候が良いので10頭くらいはいけるんじゃないですか」

自信に満ちたコメント。0だと取材者もつらいものがありますが、
10頭も取れるとなると、次々といろいろなコウモリが確認できそうです。
中には新種の発見なんかもあたったりして、と皮算用を始めちゃいました。

もちろんコウモリが飛び回るのは夜。
夜なべの定期巡回に向けて一同腹ごしらえをすることに…。

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中央の外部調査員・多田さんを中心に、手馴れた様子で青空クッキングが始まりました。
このような調査では毎度自分たちで自炊して活動を続けています。

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今日のメインはナスと挽肉のカレーなのだそうです。便乗できてありがたし。

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手馴れた感じで次々とおつまみが作られていきます。
左が最近沖縄から引っ越してこられた外部調査員・江藤さん、
右は高知大・大学院生の寺山さん。

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お手伝いに来た高知大生・高田くんも力仕事を終えてリラックスモード。

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メインディッシュ完成。つまみの鶏皮もトッピングさせていただきました。

聞けば、四国自然史科学研究センター(以下四国研)の調査は、彼ら彼女ら
をメインに、いつも何人かの外部の方の協力で進められているとのこと。
それぞれどういうご経歴なのでしょうか?

江藤さん
「この前まで沖縄のやんばる地域でヤンバルクイナ他の動物の保護活動をやってました。
この春から黒潮海流に乗って高知に上陸。四国研の調査のお手伝いをやらせて
もらっています。沖縄には羽を伸ばすと1m以上にもなるオオコウモリなんかもいて
それはそれでまた、面白いんですよ〜」。

高田さん
「静岡出身で今、谷地森先生が教えに来てくれている高知大の理学部で生物科学コースを
学んでいます。将来は教育関係に進みたいと思っていたのですが、こっちの道に
引き込まれていっています…」。

寺山さん
「高知大大学院の総合人間自然科学研究科に在籍しています。生物の行動調査が好きで、
もう6年くらい前から四国研の調査に同行させてもらっています。実際のフィールドで
学ぶことは多いですね」。

多田さん
「シェフの多田です。四国研とはもう10年以上のお付き合いで、自称・
四国研の衛生調査員と名乗っております。骨格標本作りのための動物の死骸の回収など、
それはそれは貴重な体験を積まさせていただいております」。

以上、とってもユニークなメンバーの方たち。
谷地森さんに聞いたところ、みなさんコウモリトラップの設営も慣れていて早いし、
こうやって自炊もテキパキとこなすし、いちいち指示を受けなくても積極的に
動けるメンバーなので、とっても助かっているのだとか。

「自分もそうなんですが、やはり動物・生物が好きで、少し浮世離れしていて、
話も面白いし、夢も語れるいいメンバーです」とのこと。いいコンビネーションですね。

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天狗荘の駐車場特設会場でこの日開催された「津野山古式神楽」の舞台。
食後は9時の巡回調査までしばし時間を忘れて、地方に伝わる貴重な文化研究の
時間に当てさせていただきました。

さてさて時刻は午後9時、待望の巡回調査が始まりました。
獲物、もとい調査対象のコウモリちゃんは捕獲できてるかな〜。

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八ツ墓村のような様体で森に歩を進める調査隊の面々。

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トラップを覗き込みます。

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いました! コキクガシラコウモリです。

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おもわず笑みのこぼれる調査隊員たち。記念撮影が始まりました。
みな基本動物好きなのです。

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さて、次のトラップは〜。ん、残念。

結局9時の巡回では、コキクガシラコウモリ1頭の捕獲でした。
さっそくベースキャンプに戻って体躯の調査を行います。

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今まで食事をしていたところでおもむろに始まる、体躯調査。

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並行してテキパキと食事の後片付けも進められます。プロの仕事です。

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つかまったコキクガシラちゃんはメス。「いやん、はなちて〜」。

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体重を測ります。

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手首からひじまでの長さ、前腕長も測ります。

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骨がどこまで通っているかを見て成獣か否かをチェックします。

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フラッシュが当たって見づらいのですが、乳首の状態を確認。
ここを確認することで、子育てをしたメスかどうかまで判別できます。

計測の結果、体重6.3g、前腕長39.58cm、今年子どもを産み
授乳経験のあるメスのコキクガシラコウモリだということがわかりました。

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調査した個体は、今晩またトラップにかかった時に識別できるように
翼にマジックでマーキングして自然に返します。
よっぽど珍しい種がかかった場合は、他の調査でも識別可能なように
腕輪を付けて放すとのことでした。

谷地森
「コウモリのメスは秋に交尾し、体の中にオスの精子を保存したまま
冬眠して春まで過ごします。その春に餌が豊富にあるかどうか、環境が過ごしやすいか
どうかを見極めて、条件がいいと受精卵を宿すのです。このコキクガシラは
乳首の状態から、この春に出産し、授乳して子育てを行っている個体だとわかりました。
コウモリは年に1頭しか子どもを産みません。だから自分で飛べるようになるまで、
出産してから1か月近くは付きっきりで子育てを行います。
少なく産んで大切に育てるタイプの動物なんです。6月の中下旬が出産のピークなので、
おそらく子育て中のメスなのでしょう」。

こうやって解説を聞くことで、素人目にはただのコウモリだったのが、
「頑張って子育てしている最中のお母さんだったのね」とか、
「コウモリは一人っ子だから、きっと甘えん坊さんね」とか、
いろいろな情景が浮かび、親しみが沸いてきます。

谷地森
「洞窟の調査ではお腹の大きなコウモリや、子どもを抱いているコウモリなんかも
目にすることができますよ。あと、基本的に大きな群れを作って生活しているのですが、
鳴き声で自分の子どもを判別していると言われています。
とっても愛情豊かな動物なんです。ただ、コウモリの寿命は約10年ですが、
成獣になるまでにその半数が死亡すると言われています。
餌の不足や天敵のフクロウやアオダイショウなどに捕食されることが主な原因です。
いくら大切に育てても野生は厳しいのです」。

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ここで出会ったのも何かの縁、このコキクガシラ母さんには、達者で子育てに
励んでいってもらいたいものです。

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さて、ひと騒動終わった後、やおら展示物の調整を始める調査員の面々。
タフです。野生動物の研究を続ける人間もタフでないと食っていけません。

そんなこんなしているうちに、午後11時、本日2回目の巡回調査、
張り切って参りましょう!

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トラップにわらわら集結する調査隊。

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はにかんだ笑みを浮かべ帰ってくる谷地森隊長。…ダメだった模様です。

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次のトラップに足を進める面々。霧が出てきました。

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くまなく覗き込みますが…ダメだったようです。

谷地森さんに聞いたところ、霧が掛かってきて湿気が多く、トラップの袋が
引っ付いてコウモリが捕獲できにくい状態になっているケースがあるかも、
とのこと。当初10頭を目標にしていましたが、「今回はひょっとして5頭程度かも…」
と、渋い予測が出されました。

えこらぼレポーターは、今夜は夜なべして定期的に巡回するのかと思っていましたが、
今夜の巡回は11時で終了とのこと。なんでも、夜早い時間にかかった個体は
餌の捕食前である場合があるため、一晩トラップの中で空腹で過ごすことが
生体への負担をかけることにつながる、とのことで、2回の巡回を行っているようです。

さあ、ラストチャンスはあと1回、翌朝5時の調査にかけるのみ。
一同おとなしく学習館展示スペースで寝袋に包まって、朝までしばし休眠です!

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さて、朝5時。一番奥のトラップを回収した調査隊が帰ってまいりました。
顔色が…暗い。

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次のトラップも…顔色が暗い。

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続いて…近寄るのもはばかられるぐらい…無言。

片付けに時間がかかるので、いてもたってもいられなくなったえこらぼレポーター
最後の一箇所を見に行くことに…。

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最後のトラップ…ナッシング。

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るるる〜。

たいへん残念なことに、この朝の捕獲は0。
寝ぼけ眼で作業にあたった調査隊、終始無言でベースキャンプに帰ってまいりました。

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調査の様子をフェイスブックにアップする谷地森さん
「いやあ、残念でしたね。今回が一番悔しいかもしれません。
天気は良かったんですが、霧がでていたので、湿気が多く、トラップに水滴が
ついて発見されやすくなったか、やはり袋の口がひっついてコウモリが落ちにくく
なっていたか、あとは、そろそろコウモリにバレてきたか…。
ただ、年間通じて数の少ないコキクガシラが捕獲できたのは
良かったと思います。また8月の調査頑張ります」。

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またしても自炊のおいしい料理に舌鼓を打ちつつ、次の調査の話題で盛り上がる
調査隊の面々。くよくよしてもしょうがない、次頑張ろう次!

とここで、谷地森さんからまた面白そうな話が…。
「このあたり、アナグマの生息地帯なんですよ。道路沿いから活動が見えますよ、
行ってみましょう」

よっしコウモリのリベンジはアナグマだ! とばかりに車に飛び乗り
生息地帯に赴くことに…。望遠レンズも装着!

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絶景の四国カルスト・天狗高原

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牛が放牧されている、こんなところにも生息しているのだそうです。

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いた! 鳥。中央あたりに数羽います。

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アナグマのいそうな斜面を見つめます。

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見つめます。

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見つめます…。

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はい、お疲れまでした。コウモリに続きアナグマも惨敗。

谷地森
「いや〜、この時間ならだいたい見られるんですけどね〜。コウモリといい
アナグマといい何かおかしいな〜、今日はいつものメンバーだし、普段と変わったこと
ないし…。ひょっとしてえこらぼさん…」

はい。自分でも薄々と感じていたのですが、ひょっとしてあれですね
何か動物を警戒させるオーラでも出してたのでしょうか?
今後場数を重ねて、動物くん大好きオーラが出せるよう励みたいと思います!

冗談はさておき、いかがでしたでしょうか。
四国自然史科学研究センター・谷地森隊のコウモリ調査の様子。
コウモリ調査はこれからも毎月行われます。9月にはこの場所で、冒頭でも紹介した
「コウモリフェスティバル2016in天狗高原」という全国的なイベントも開催。
本レポートと同じコウモリ調査・アナグマ調査にもご参加いただけます。
9月はコウモリの飛び交う頭数も多いとのことですので、
さまざまなコウモリに出会えるのではないでしょうか。
ぜひご検討下さい。

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●コウモリフェスチラシ
お申し込みは四国自然科学研究センター事務局
TEL・FAX:0889-40-0840 E-mail:yachimori@lutra.jp まで。
※ご宿泊希望の方はお早めにご連絡お願いします。

えこらぼの環境学習講師としてもご登録いただいている谷地森さん。
レポートの最初の方でもご紹介していますが、県内の小・中・高校での出張事業を
はじめ高知大でも非常勤講師として、環境学習教育に力を入れた活動を行われています。
学校や地域で何か生物に関わる授業を受けたいといったご要望がありましたら、
ぜひぜひお気軽にえこらぼまでご連絡いただければと思います。
何卒よろしくお願いします〜。

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動物好きで、ちょっと浮世離れした感もある、四国自然史科学研究センター・
谷地森コウモリ調査隊の面々。そのバイタリティーと、
並々ならぬ知識に魅せられてしまいました。
みなさん本当にお疲れ様でした〜。