助成金の獲得に多くの実績がある西本さんにインタビュー

2014年1月26日 インタビュー

■ 四万十楽舎 専務理事 西本五十六さんに聞く

目的と内容がきちんとしていれば、助成金の獲得は案外うまくいく

山本 稔:環境活動支援センター「えこらぼ」センター長
西本五十六さん

西本五十六(にしもといそろく)
四万十楽舎 専務理事

 「ろくさん」という呼び名で親しまれる頭脳派マネージャー&肉体派ナチュラリスト。ビジネスマンの経験を経て、青少年に自然共生の暮らし方を伝え、過疎の地域を元気にすることをライフワークに。
広範な仕事をこなす中で、とりわけ資金獲得手腕には定評があり、ユニークかつ大胆な狙いで全国区の大型助成金を数多く獲得した実績をもつ。
薪小屋作り、看板作りから資金調達まで四万十楽舎の大仕事を一挙に引き受けるお酒大好き、温泉大好きの「ろくさん」。子どもキャンプの決まり文句は”快便、快眠、快食”の三快!
環境活動に取り組んでいる方々にとって、活動資金の獲得は切実な問題です。今日は、助成金の獲得に多くの実績がある西本さんにお話を伺います。

まず、西本さんが専務理事を務められている四万十楽舎はどんな事業をされているのですか。

 四万十楽舎は、1988年(昭和63年)に閉校した中半小学校の校舎を活用した体験型宿泊施設です。四万十川流域の自然体験による環境教育、地域交流・活性化を目的として1999年(平成11年)に設立されました。
 施設は、四万十市教育委員会が保有していて、楽舎が指定管理を受けて「宿泊事業」と地域連携のボランタリー事業などの「自主事業」を行っています。

では本業は「宿泊業」ということになるわけですね。助成金は宿泊事業が対象なんですか、それとも自主事業?

 本業は飲食・宿泊業ということになりますね。事業収益は主として宿泊事業で確保しています。
 助成金の活用は、自主事業の分野になることが多いですね。青少年育成プログラムや環境活動、四万十川の自然体験プログラムや流域の魅力を生かしたグリーンツーリズムのコンテンツ整備などがこれに当たります。
 しかし、我々が行っている自主事業は「自然」や地域の「歴史・伝統・文化・暮らし・産業」など様々な分野とかかわっています。いわばニッチ(隙間)素材を発見し地域の再価値化を行っていく仕事ともいえます。だから、文科省や環境省、国交省など、行政の視点から見てもどの分野に属しているかわかりにくい。
すべてに絡んでくるんです。逆にそこが「面白い」ところなんですけど・・。だから事業についても「これは文科省系かな・・」とか「この事業は環境省系だね・・・」とか、事業の意図や視点の置き方によって分かれてくるんです。
 助成金も「これは環境系だね・・」とか「こちらは文科省系だ・・」とかよく見ると分かれています。いかに事業の特徴と助成金のカラーにマッチさせるか、趣旨に合うものをいかに探しだすかが大事なポイントだと思います。

マッチングがうまくいった例は?

事例1 サントリー「世界愛鳥基金」
四万十川流域の「野鳥図鑑」事業


 実は去年からなんですけど、四万十川の源流から河口まで、四万十川流域のフィールドワークをやってるんです。その中で、四万十川流域で意外と目を向けられていないものや、わかっていないことが多いということがわかったわけです。なかでも、流域に生息する「鳥」についてあまりよく調べられていない。そこで、四万十川流域だけに限った野鳥図鑑を作ろうということになり、2〜3該当しそうな助成金に申請書を出したわけです。しかしどれも採用にならない。ずいぶん頑張ったのに・・と頭を抱えていたんですが、目先を変えて調べなおそうということで、気を取り直して探しているところにサントリー「世界愛鳥基金」を見つけたわけです。「これはピタッリ!」ということで申請したところ、すぐに採用になったわけです。こういう点はやっていて面白いと感じるところですね。
 助成金も事業費の100%ですし、結果報告なんかもずいぶん簡略化されたものでした。有名基金に対しては、申請も気おくれしてしまいがちですが、事業内容と助成金の意図がマッチすれば案外うまくいくものです。 ■公益信託 サントリー世界愛鳥基金
http://koueki-suntory-aityou.jp/bosyuu/

年間で何件くらいの助成金を受けているんでしょうか?

 普段の年ですと平均して毎年3〜4件くらいの助成金を獲得しています。ただ、平成25年度は前述の「野鳥図鑑」だけでした。
 というのも、今年度は四万十楽舎の創立15年にあたることから、四万十楽舎の位置づけを高めていくことを目標に、「賞」の獲得を目指したためです。おかげで、環境省の「第8回エコツーリズム大賞」の特別賞、もう一つが農水省の「オーライ!ニッポン大賞」の審査委員会長賞の2つを獲得することができました。 ■第8回日本エコツーリズム大賞
http://www.ecotourism.gr.jp/index.php/events/award/731-8
■「オーライ!ニッポン大賞」
http://www.kouryu.or.jp/ohrai/

全国向けの助成金で、比較的取り組みやすいものはありますか

事例2 日本郵便
「年賀寄付金による社会貢献事業助成」


 昨年度のことで言えば、大変面白かったのは郵政省の主催の「年賀寄付金による社会貢献事業助成」です。この助成金は「ハコモノ」に使えるんですね。しかもたいへん枠数も多く、使い勝手が良い。総事業費の90%の助成があるため、予算規模の大きな事業には最適なんですね。
 実は、四万十楽舎の屋外トイレがいわゆる旧式で、だれも使わなくなっていました。そこで明るいきれいな屋外トイレに改修しようと、「年賀寄付金による社会貢献事業助成」に申請したわけです。結果、3m×2mの屋外トイレ改修工事費用として350万円の補助金が支給されました。 日本郵便 「年賀寄付金による社会貢献事業助成」  物品や施設の購入を主とする助成金なので、申請時には「見積もり書」の添付は必要ですが、基本的に申請の手続きも簡単ですし、納品・設置が完了すれば特に事後の成果報告などは必要ありません。手間もかからない助成金で、活用度も高い助成金といえるでしょう。 ■日本郵便
http://www.post.japanpost.jp/kifu/

書き方や企画に工夫することで、うまく獲得できたといった例があったら教えてください。

事例3 公益財団法人「河川整備基金」

 徳島県と四万十川流域にしか見られない小さな白い花ですが、「トサシモツケ」という希少種の花を保護しようということで、調査と看板作りの助成金を申請したことがあります。 公益財団法人「河川整備基金」 その看板の本当の狙いは、「トサシモツケ」を保護するための看板ということではなく、バイクツーリング向けのガイド看板だったわけです。
 これを「トサシモツケ」の保護や観察と絡ませて申請し、助成金の獲得まで結びつけで看板の設置ができました。
 基金の選考委員の人たちの心をつかむアイデアやロジックをうまく盛り込んでいく。基金に合うように加工し、時間をかけて作り上げていくことが大事です。私たちはだいたい2年がかりで計画を立てることが多いですね。 ■公益財団法人「河川整備基金」
http://www.kasen.or.jp/c_jyosei/jyosei01.html

助成金情報を探すとき、どんな探し方をしていますか?

だいたい今は、インターネットで助成金一覧サイトを検索するか、一部上場企業のホームページでCSRのところを調べることが多いですね。書籍では「助成金応募ガイド」というものもあります。以前は購入もしていたんですが、結構価格が高いので、今はほとんどインターネットです。これで十分情報が得られます。 【参考】 ■助成金ネット
http://www.josei-kin.net/search/
■環境・省エネ補助金サイト「エネポ」
http://www.ene-po.com/
■メールニュース「えこらぼだより」
http://ecolabo-kochi.jp/ecolabo_news.html
■ピッピネット
http://www.pippikochi.or.jp/support/subsidy/

耳より情報とでもいうのでしょうか、申請書類作りが容易で、我々でも比較的獲得率が高い助成金をこっそり?教えてください。

事例4 高知食糧株式会社 「高知県清流保全パートナーズシップ」
「四万十川の川底調査」事業


 そうですね・・、高知食糧株式会社さんの「高知清流保全パートナーズ協定事業」なんかは、獲得しすい穴場の助成金ですね。高知県内の環境活動団体にとっては狙い目だと思います。何より応募数がそれほど多くないことが、申請者にとっては好都合。このため、これまでは申請した事案は100%採用してもらえました。
 この助成金制度はあまり認知されていないんですね。だから、いまは応募数の少ないことを利用して、大いに狙ったらいいんじゃないでしょうか。
 支援対象は高知県の川の環境保全・保護はじめ、環境全般に関する活動となっていると思います。 高知県環境共生課と連携しており、申込窓口もここで行っています。
 私たちがこの助成金を獲得したのは、これまで2回です。
そのうちの一つに「四万十川の川底の調査」事業があります。
 四万十川には流れのある「瀬」と淀みのある「淵」があるんですが、「淵」については意外に知られていない。 高知食糧株式会社 「高知県清流保全パートナーズシップ」 「どのくらいの深さなのか」「どの淵がいちばん深いのか」わかっていなかったんですね。
 潜水士さんに潜ってもらって調べてみると、なんといちばん深い淵は、22メートルありました。深いとは言われていましたが、これほど深い淵があるとは驚きでした。

高知県ではその他にも、県内活動家が利用しやすい助成金はありますか?

事例5 四国銀行
公益信託「こうちNPO地域社会づくりファンド」


 四国銀行の「こうちNPO地域社会づくりファンド」もおすすめですね。
高知県内の公益的活動全般を対象にしている助成金で、幅広く分野で活用されているようです。このファンドは、公開の審査会があり、助成を受ける団体が一堂に会しプレゼンテーションをおこない助成先を決定します。
だから、どんな団体がどんな活動をしているか、わかるという点でたいへん参考になります。 ■公益信託「こうちNPO地域づくり社会ファンド」
http://www.shikokubank.co.jp/corporation/other/npo.php

事例6 三井物産株式会社「三井物産環境基金」

 獲得事例というわけではないですが、いま私たちが狙っているのが「三井物産環境基金」ですね。
500万円未満規模から5000万円以上の大型の事業を対象としていることと、3年間が助成対象期間となるの も魅力です。
去年から狙っていて申請までいかなかった事業案件ですが、今年も引き続き狙って行こうと取り組んでいます。
事業規模や金額など申し分ない助成金で、獲得の難易度もかなり高いと思われるかもしれませんが、我々は事業目的や活動内容がしっかりぶれずに説明できれば、案外うまく取り込めるのではないかと期待しています。
双方の狙いが合えばうまくいくし、その趣旨に合わせた計画書を作成することがポイントになると思います。 ■三井物産株式会社「三井物産環境基金」
http://www.mitsui.com/jp/ja/csr/contribution/fund/

中四国地域の助成金で、使えるものはありましたか?

 ちょっと面白いと思われるのは、中四国農政局が行っている助成事業で、中山間地域の活性化や農業の振興・地域づくりといった事業が対象となっています。
 これなども意外に大きな予算が獲得できますし、利用価値が大きいのではないかと思います。
 ここからが耳寄り情報ということになると思いますが、意外にも高知県からの応募が少なく、助成金のご担当者からも「高知県から何か申請がない・・何か申請する案件はないか?」と暗に勧められてチャレンジしたら、意外に簡単に取れた経験があります。ポイントはいかに地域の人たちと連携を取りながらやっているかということだと思います。
 農水系の助成金は予算規模なども大きく、関係する分野も広いので、環境活動団体にも十分チャンスはあるし、チャレンジする価値はあるのではないかと思います。 ■中四国農政局
http://www.maff.go.jp/chushi/sesaku/nouson/index.html

本日はたいへん貴重なご意見をいただきありがとうございました。 きっと、環境活動団体の皆さんには参考になったのではないかと思います。 ありがとうございます。

参 考

四万十楽舎の助成金獲得実績

丹念に探せば色々な補助金や助成金を獲得する事が出来ます。(西本氏)
行 政
文科省---四万十市教育委員会生涯学習事業
農水省---(一財)まちむら交流機構
(公財)高知県森と緑の会
中国四国農政局
環境省---エコツアー関連
(公財)河川財団
郵政省---日本郵便 年賀寄付金配分事業
文化庁---四万十市文化遺産を活用した地域活性化事業
厚労省---ふるさと雇用再生特別基金
観光庁---四万十川ガキ体験事業
民 間
高知食料(株)
サントリー世界愛鳥基金
JTB交流文化賞

以上