磯の生き物図鑑(生物学者)岩瀬文人さん

磯の生物をじっくり観察しよう

みなさん生き物を「名前」でひとくくりにすると思いますが、ちゃんと観察すると、ひとつひとつちょっとずつ違うんですよ。
たとえば同じムラサキウニでも、どっちが逃げ足が速いか比べると、ちゃんと個体差があるんです。だから最初から決めつけずに、生き物そのものをじっくり観察してほしいです。
貝も、浜辺で拾ったときにはぼろぼろに崩れているものもあるけれど、そういうときに「貝の図鑑」を見てみると、貝って壊れるとこうなっていくんだなぁとわかって面白いです。

磯の観察に役立つおすすめ図鑑

おすすめは何と言っても、文一総合出版の『海辺のエビ・ヤドカリ・カニハンドブック』です。この図鑑の良いところは、生き物の写真に矢印がついていて、「ここ大事ですよ」というコメントが書いてあって、すごく見やすいところです。同じく『海辺で拾える貝ハンドブック 』も面白いですよ。貝殻が擦(こす)れてだんだんボロくなっていく途中経過の写真が何枚も載っているので、磯や浜辺で拾った貝が何なのか、とても調べやすいです。この2冊で夏休みの磯に関する自由研究はかなりカバーできますよ。

「海辺のエビ・ヤドカリ・カニハンドブック」

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1,400円 
渡部 哲也 (著)
文一総合出版新書

「海辺で拾える貝ハンドブック」

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池田 等 (著)
松沢 陽士 (写真)
文一総合出版

磯の観察におすすめの場所

高知には面白い場所がいっぱいありますが、土佐清水、大月、竜串に行けば、すごく近くでサンゴの観察ができるし、ぼくが住んでる近くの樫西海水浴場などは泳いでも面白い発見がたくさんあるところなんですよ。

そこまで行くのが遠いなぁというときは、興津(おきつ:高岡郡四万十町)の海水浴場も岩場があって磯の生物がたくさんいます。東はヤ・シイパーク(香南市夜須町)の先にある大手の浜のマリーナの近くにはサンゴが沢山いますが、物部川の影響で水が濁っていると観察しにくいので、防波堤より向こう側に行くといいですよ。そこなら潮が引いたらサンゴが間近に見られます。もっと東に行くなら、奈半利のふるさと海岸(安芸郡奈半利町)周辺もサンゴの見られるスポットです。

こんな自由研究はどうでしょう

『サンゴのかたち調べ』

たとえばいろんな形のサンゴがあるので「どんな形のサンゴがあるだろう?」と研究するのもいいですね。そのためには、どれがサンゴでどれがサンゴじゃないか、見分け方を図鑑で見ておくのも大事です。柔らかいサンゴ、硬いサンゴいろいろあります。もっと中級になると、潮が引いたときにじゃぶじゃぶ海に入って行って、たくさんあるサンゴの表面や枝の間に暮らしているエビとかカニを探すのも楽しいと思いま
す。手を近づけると怒ってハサミを振り上げるカニなんかがいますから、その瞬間が撮影のチャンスですよ!

「サンゴ礁の生きもの」

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奥谷 喬司 (著),
楚山 勇 (著)
出版社: 山と溪谷社

磯の観察で気をつけること

熱中症防止のために帽子と水は欠かせません。
磯は滑りやすくて危ないのでちゃんとしたスニーカーを履いて出かけてくださいね。クロックスなどは滑りやすいので注意が必要です。
磯の生物は毒を持つのも多いし、種類によっては命に関わるような毒を持つ貝やウニ、海藻、タコなどもいます。だから、磯の生物を観察するときにはむやみに生物にさわらないことが大事ですよ。最初はちゃんと磯のことをわかっている指導者と一緒に行くことをおすすめします。

おまけ:釣りには釣り用の魚図鑑がおすすめ

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海で実際に魚を見る機会は、釣りに出かけるときが一番多いんじゃないかなと思います。
海の中を泳いでいる魚と、釣り上げた魚は様子が違っていますので、
釣りに出かけて魚を観察するなら、普通の魚類図鑑よりも、釣り用の魚類図鑑の方がわかりやすいですよ。
釣り用の図鑑の良いところは、魚の食べ方が書いてあるところです(笑)。
毒がある魚か、食べられる魚かもわかりますね。本屋さんか釣具屋さんにあると思います。

本:釣り魚ガイド トンボ出版

おまけ その2

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地域の磯の図鑑、海の観察ガイドがいろいろなところから出版されています。地域性が豊かで、棲んでいる生物の種類も違うので、こういうガイドブックを探すのも楽しいと思いますよ。

写真:黒潮生物研究所で作った「海の観察ガイド」